太陽電池モジュールにおいて、システムの出力低下を引き起こすPID(電圧誘起出力低下)という劣化現象が問題となっています。
PIDとは特定の条件下において、太陽電池モジュールに高電圧がかかり、出力が大幅に低下する現象のことをいいます。

モジュールやシステムの構成部材の種類、高温、高湿、システム電圧など様々なものが要因になっていると考えられており、近年では、このPIDを抑制し、太陽光発電の長期的な信頼性をいかに上げるかが課題となっています。

太陽電池モジュールでは、その心臓部となる太陽電池セルの回りに封止材を充填することによって周囲の環境から保護しています。
封止材に使用されている材料としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)が代表的で、加熱・加圧することで、太陽電池セル、ガラス、バックシートと接着させています。

産業技術総合研究所は、太陽電池モジュールの封止材を従来のEVAから高分子材料のアイオノマーに替えることで、PIDが起こらないCIGS太陽電池モジュールを開発したと発表しました。

CIGS太陽電池はシリコン系太陽電池に比べて劣化が小さく、高いPID耐性を持っている上に、封止材をアイオノマーに替えることによって、さらにPID耐性が高まることを確認したとのことです。

CIGS太陽電池は人体に有毒な硫化カドミウム(CdS)が用いられており、環境面での負荷が高い点が短所となっていますが、この点についても、今後検証を重ねることによって改善されていくものと思われます。

以上により、CIGS太陽電池モジュールのメガソーラーなどへの導入が進み、太陽光発電システム全体の導入拡大や長期信頼性向上が期待されます。